「おお!」 円形闘技場にどよめきが走った。観戦者を守るための防御壁は一部が破壊され、闘いのまきぞえで負傷者も出ていたが、誰も帰ろうとはしない。なにしろ今年の試練の儀式は、惑星ベジータの歴史上かつてないほどの見ものなのだ。サイヤ人の若者は通常、17の歳から試練を受ける資格を得るが、今年は特例中の特例として16歳未満の少年が数名参加していた。さらに、その内の何人かは、大人ですら手こずらせる戦闘の天才だったのである。 「そこまで!」 中でも群を抜いている子供が一人、まだ10歳そこそこの幼さだが、自分の3倍ほどもある大人の戦士に血反吐を吐かせ、歓声を浴びて闘技場の真ん中に立っていた。制止の声を上げた審判が少年の名を高らかに告げると、観客は腕を振り上げ床を踏み鳴らし、地鳴りのような音を立てた。 「なかなか面白い儀式ですね」 勝負を賓客席から眺めていた小柄な異星人が、張り付いたような笑みを浮かべて呟いた。隣に立っていたサイヤ人が答える。 「はっ、今年は特に能力の優れた者が多いようです。本来は戦士の等級を決めるための儀式で、これほどの熱気はないのですが…」 「あんな子供が勝ってしまうのだから無理もないでしょう。戦闘能力は三千といったところでしょうか。パワーだけでなく駆け引きにも長けている」 サイヤ人は儀礼用のマントを肩にかけ直すと、後ろに控えていた下級戦士に飲み物を持って来るように命じた。 「フリーザ様、あれを」 小柄な異星人より一段低い席に腰掛けていた醜い大男が、棘のようなコブのついた太腕を持ち上げ指差した。その先には、先程勝者となった子供が同じ年頃の少年たちに担がれ、握り拳を上げて歓声に応える姿があった。少年を担いだ一団は闘技場の中をぐるりと一周し、賓客席の近くまでやってきていた。 「何なのですか、ドドリアさん」 「いや、似てませんか、どことなく」 ドドリアと呼ばれた大男は、ちらりとフリーザの側のサイヤ人を見た。サイヤ人は視線を無視して不敵な笑みを浮かべている。「万歳! 王子殿下、万歳!」 観客の興奮した声が聞こえてきた。 「ほう」 ドドリアがやっぱりと呟き、フリーザは隣の男を見上げた。 「なるほど、あの子供はあなたの子なのですね。王自ら訓練したのですか」 サイヤ人の王は腕組みをして遠くの息子を見下ろしながら答えた。 「…ごく小さい時に何度か手ほどきはしましたが、今では実戦で経験を積ませています。あれに刺激されて能力が伸びる者が、この数年増えているようです」 「先が楽しみという訳ですね」 若い下級戦士が王と賓客に琥珀色の酒を注いでいく。側近のドドリアは儀式の最後までは興味がないようで、退屈そうにその酒をくらっていたが、フリーザは飲み物には手をつけず、じっと闘技場を見下ろしていた。 ←戻 次→ <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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