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 フリーザの惑星ベジータ滞在から半年が過ぎた。表面上は何一つ変わらないように見えたが、地下では急速に物事が進行していた。
 サイヤ人の中・上級戦士を中心とする軍団が組織され、フリーザ軍の目から隠れて活動を開始した。少人数での戦闘の経験しかない戦士たちは最初は戸惑ったものの今では指揮官の命令に従うことにも慣れ、強固な軍隊が作られつつあった。フリーザは変わらず部下を引き連れ、己の領土を拡大するのに腐心しているように見えた。しかしその片目は常に惑星ベジータに向けられていた。

 フリーザは支配域を広げると、新しく拠点とする惑星を定め、その星の名を改めさせる。その内の一つ、惑星フリーザNo.21は銀河系文明の中心から離れた辺境星であり、惑星ベジータに最も近い他文明との接点であった。

 ドドリアは退屈そうに骨に付いたソースをしゃぶっていた。食事は済んだが酒は飲んでいない。頭を明敏に保っておくようにと、ザーボンに煩く言われているからだ。
 半年というもの、彼とザーボンは交代でこの星に待機していた。サイヤ人に関する報告に逐一目を通し、貸与する宇宙船を管理し、その他ありとあらゆる物資の流れを監視するのが仕事だった。継続的に監視を続けると変化が起こっているのが手に取るようにわかる。まず惑星ベジータから外宇宙への交信が減少した。戦闘員としての任務を要請する打診が、特に上級戦士ほど少なくなったのだ。代わりに、惑星ベジータに設置されたメディカルマシーンの使用頻度が倍になった。メンテナンスの回数からそれがわかる。フリーザ軍の傭兵が、無許可で施設や装備を使用して戦闘訓練を行うのは軍規違反だったが、ドドリアはあえて看過した。

「動くなら、早く動きやがれ」
しわがれた声でそう呟くと、味のしなくなった骨を皿の上に放り投げた。フリーザが前線から帰還するまで待つように指示されてはいたが、いざ緊急の事態が起これば彼がサイヤ人を掃討することになる。それが済めばこんな退屈な毎日は終るのだ。ドドリアは、あと何日自分の忍耐が持つだろうかと考えていた。

「スカウターを外せ」
ベジータ王は基地の一室に入ると、部下の耳を指差した。壮年の部下はすぐさま従い、集音マイクに会話を傍受されないよう機械を引出しにしまった。
「いよいよ実戦だ」
王はテーブルの上に惑星ベジータの地図を広げる。
「明朝、トマ山脈に軍を集結させる。そこでの模擬戦で最終調整が済んだ後、他惑星へ乗り込む。宇宙船は手配したな?」
「はっ。惑星フリーザには我々が要求する規模の船がないとのことでしたが、1〜2ヶ月のうちに調達するそうです」
王は舌打ちした。
「ふん、出し惜しみしているな。催促して急がせろ。フリーザが前線から戻る前に成果を挙げねばならん」
「フリーザは我々の行動を反乱と取るでしょうか」
「この惑星郡の連中は最新の武器を揃えている上に、個々の戦闘能力も高い。戦士を大勢配備する必要があったと報告するだけで充分だ。『どのように戦ったか』まで知らせる義務はない。
奴はサイヤ人をなめきっている。そのくせ我々の力は利用したがっているがな。忠誠の証に星を3つもくれてやれば満足するだろう」
「それではスカウターは使えませんな。会話が筒抜けになる」
「だからわざわざ連絡員を各部隊に配置したのだ。まず都市と軍の施設を攻撃する。奇襲が成功すればこの規模の星でも3日で落ちる。3日だぞ、記録的だ」
王は熱弁をふるい、両手を机について俯くと、傍らの部下にもやっと聞こえる声で呟いた。
「もう少しだ。やっとここまで来た。屈従から逃れて…。我らは自由だ」

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