Stalking Go Go!
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―奥州・伊達家邸宅―

「hum hum hum…」

政宗は朝から上機嫌である。
懐から出した何かを卓に並べながら、鼻歌混じりに極上の笑みを浮かべている。
最近は大きな争い事もなく穏やかな日々が続いていたが、此程まで上機嫌な事はなかった。

「…失礼します。」

丁度其処へ小十郎がやってきた。
襖を開け一礼した小十郎が頭を上げた時、目に飛び込んで来たのは今まで見たことのない程上機嫌な政宗の姿だった。

「…政宗様、いかがなされましたか?」
「Ah…coolなフォトが撮れたんだ。」
「…ふぉと…ですか。」

舶来の道具にそんな名前の物があった事を小十郎は思い出していた。
だが、舶来品に疎い彼はフォトが何かという事まではわかっていない様子だ。

「見るか?prettyな子猫が写ってるぜ。」

漸くフォトが何かを思い出した小十郎は、政宗が楽しそうに差し出した紙に手を伸ばす。
そうだ、ふぉとというのは景色や人を見たままに紙に焼き付ける箱から出てきた紙の事だ。
子猫のふぉとを嬉しそうに並べるなんて、政宗様もまだまだ可愛らしいところがあるものだ…そう思いながら感慨深げに目を細めて写真を受け取った小十郎は、其処に写し出されていたものを見ると大きく目を見開いた。

「なッ…なんですか之はッ?」
「prettyなmy honeyが写ってるだろ?子猫みたいにlovelyなんだぜ?」
「…子猫……ですか…」

小十郎が言葉に詰まるのも無理はない。
手にした写真に写っているのは、子猫などという言葉が全く当てはまらない、寧ろ『猛虎』か『獅子』という言葉がしっくりとくる者の姿が。
下帯一枚で鍛え抜かれた筋肉を露わにし、肩には手拭いを引っ掛けているという些か漢らしい姿なのである。

「西海の…ですよね?」

そう、其処に写っているのは西海の鬼こと長曾我部元親。
その表情からは全く撮られている事に気付いていない様子である。

「Yeah!prettyだろ?」
「…はぁ。」

どう見ても稽古の後で湯浴みに行く途中である。
後ろを振り返りながら、若干眉間に皺を刻んだ表情のどこをどう見たら『可愛い』という思考に繋がるのだろうか。
それ以前にいつ誰が…。
小十郎は考えれば考える程わからなくなってきた。
頬杖を突きながら写真を眺める主ではなく、卓に並んだ写真をチラリと見遣る小十郎。

「…ッ!?」

小十郎が手にしている写真などまだまだ可愛いものだった。
明らかに情事の最中の二人の写真を見つけてしまった小十郎は、目眩を感じずにはいられなかった。

「…ありがとうございました。」
「こっちのフォトもlovelyだぜ?」

あられもない姿の西海の鬼と、雄の表情でその鬼を組み伏せている主の姿が刻まれた写真を差し出そうとしている政宗に、小十郎は穏やかに告げる。

「小十郎には勿体のうございます。どうかおしまい下さい。」
「…見ないのか?」

残念そうに言った政宗が少し可哀想に思えた小十郎だが、このような写真を並べているのを兵士達に見られてしまったら…其の士気に影響が出かねない。
この場合の影響とは、主君に呆れるといった意味ではなく。
あまりに艶っぽい写真ばかりなので、おかしな気を起こす者が現れるのではないかという意味である。
其れ程艶やかな主君の写真に、実は小十郎も逸る気持ちを抑えるのに必死だったのである。

「十分見せて頂きました。」
「そうか…」

一度火が点いてしまうとなかなか収まらない主君の性格を知る小十郎は、漸く写真をしまい始めた政宗を見つめながらホッと胸を撫で下ろした…が。
背後でスッと襖が開く気配を感じて小十郎が振り返ると、胸を撫で下ろした手で其の侭目を覆いたくなる様な光景が目に飛び込んできた。

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