俺様メイド 序章
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「…だから、気にすんなっつの。いいから帰れって。」

元親は呆れた口調で目の前の男に告げた。
だが、男は微動だにしない。
元親は気にするなと言ったが、端から見れば男が何かに気を遣っているという感じは全くしない。
寧ろ全く聞いていないと言った方が正しいか。

「Ha! 俺が好きでやってんだから気にすんな。All right?」

傲岸不遜な様子で答えたのは、奥州筆頭伊達政宗。
政宗が此処四国に居るのは、ちょっとした理由があった…。


同盟を組んでいる元親と政宗は、互いの兵を率いてとある地域の制圧に向かった。
荒くれ共がズラリと顔を揃える両軍により、あっという間に制圧は出来たのだが。
帰りの険しい山中で、一人の残党が突然現れた。
政宗は死角である右側から襲い掛かられ、一瞬反応が遅れた。
元親は凶刃から護る為、咄嗟に政宗を庇って後ろから覆い被さった。
其の結果政宗は無傷だったが、元親は利き腕を負傷…という事があったのだ。
そんな事があり、奥州へ戻る予定だった政宗は、自軍を小十郎に託して一人此の地に残った…という訳である。

「…別にアンタのせいじゃねェだろ?」

そう言うと、左手で目の前に置かれた湯呑みを手にする。
そして熱い茶を啜りながら政宗の反応を窺う。

「利き腕が使えねェんだ、色々不便だろうが。」

元親の言葉は全く聞いていない様子の政宗は、更に言葉を続ける。

「メイドだと思って何でも言いな。」
「馬鹿野郎!俺まだ死んでねェぜ?」

毎度のように政宗の南蛮語を理解していない元親は、頓珍漢な言葉を返した。

「其の冥土じゃねェ。maid…世話係だ。」
「…世話係ィ?」

政宗が口にした南蛮語の意味は解った元親は、尚更納得いかないといった様子で言い返した。

「別に不便じゃねェッつの。其れに俺、世話係っての苦手なんだよ。」

兵達を家族同然に思っている元親は、よくありがちな身の回りの事を家臣にやらせる事を好まない。
食事の支度や買い出しに到るまで、何から何まで自ら動いているのだ。

「Don't worry. 俺は今はアンタの専属メイド。細けェ事は気にすんな。」

ポンポンと元親の膝を叩きながら言った政宗に、呆れ返った表情で告げる。

「なぁ…アンタ俺の話聞いてっか?」
「聞いてたぜ?Perfectに。」

此の侭では埒が明かないと判断した元親は、深く溜め息を吐いてから政宗に告げた。

「気持ちは有り難く貰っとくぜ。だがな、世話係は俺には必要ねェ。」

穏やかな口調で元親が言うと、突然政宗はククッと喉奥で笑った。

「……?」

呆気に取られながら元親が見つめると、政宗はしたり顔で告げる。

「最初に言ったろ?」
「…あン?」
「『俺が好きでやってる』って言ったろ。必要だろうがなかろうが関係ねェ。」
「…はァ?ンだよその俺様思考!」

噛み付く様に言い返す元親。
政宗はグッと怪我をしていない方の肩を抱き寄せ、耳元で甘く低く囁いてやる。

「…いつもと違うアンタに触れてェ…っていうんじゃ駄目か?」

元々政宗の低音に弱い元親。
怪我のせいで多少なりとも参っているところに、脳内に直接注ぎ込む様な甘い低音域。
これで落ちない訳がない。

「そ…そんなに言うんだったら二、三日はいいぜ。」

しどろもどろになりながら答えると、政宗はニヤリと笑った。
斯くして政宗の俺様メイド生活が幕を開けた…。


―続―
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