【燐光-御返し-】
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切らない理由の増えた長く質量のある髪を束ね、直射日光が突き刺さりはじめたお気に入りの縁側から少しでも涼しい方へ涼しい方へと巨体をだらしなく引きずる。

戦神と謳われた姿は何処か。

暑さが蔦のように絡まり、もう無駄かと拭うのを諦めた汗が肌を流れ雫になる。



前なら涼を求め山で秋まで過ごすのだが暑さなど我慢できるほどの幸せが此処には在る。

瑠璃色の浴衣を着た政宗が頬を赤らめ自分の手を握っている、去年の夏の思い出。

今年は黒めの締まった灰色に真っ赤な花が描かれている浴衣を贈ろうと思う。

本当は甘い色を着て欲しいが贈れば受け取ってくれない上に激しく不機嫌になる。

女扱いでも子供扱いでもないのだが政宗的男の自尊心が赦さないらしい。

やはり小さくてもどんぐりまなこでもぷにぷにでも立派な男なのだ。
…ならばいっそ褌の方が喜ぶのだろうか。

しかしそれは自分の趣向ではないので却下する。

何よりも衣服と相俟って健康的な太股で締まる西洋長足袋(ニーソックス)が神なのだ。
これこそ贈るとぶっ飛ばされるが。でも止めない。ぜったいやめない。


素肌と布地の境目を指で楽しんだ時の事を思い出しつつ目を瞑り妄想に耽っていると、




「慶次ぃ〜〜〜」


急にやってきたおかず様がにたにたといやらしい笑みを浮かべ、だらしなく開いた着物の合わせに足を付き入れ擽る。そして乳首を摘まれる。

昨晩、調子こいて変ななぶり方すんじゃなかった。


「今晩、城下で祭りがあるのだが。」

「ああ、もちろん行くだろ?」

上半身を飛び起こして見上げる。

「ふん、行かぬと言うても無理矢理担いでいかれるのだろうが。
しょうのない、っ、付き合うてやるだけだ。」

だが表情は気恥ずかしげに“当たり前だ”と返してくれている。

「……して、慶次は…わしに…昨年…上等な浴衣を…お、お、お、お…」

ごくんと大きな音をたて唾を飲み込んだ。

「…け、献上してくれたろう?
まったく健気なものだ…!」

ああ、そんなに……

「喜んでいただけて至極光栄だねぇ。」

甘えた声で猫のようにまとわり付く。
わざとではなく。

去年、俺が送った瑠璃色の浴衣を友人を呼んだ時など特別な時に着てくれていた。

それだけでも十分に幸せだが『この方』に言葉にされるとさらに特別なものになる。



「で、だな…
褒美を与えてやろうと思うてな…」






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