【燐光】
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「夏祭り、行くだろ?」

間近で、懐く犬のような力強い甘え笑顔というか………



拒否を許してくれない大好きな笑みで聞かれれば頷く事しか出来ず、さらに極上の嬉し笑顔を作りどこから出したのか髪飾りを乗せられるが短い髪では固定しにくくその笑顔に焦りのようなものが混じる。

「女扱いするな…」

緩く髪を引っ張る飾りを外すと悲しく眉を寄せられその表情にも弱く、仕方なく自分でしっかり付け直す。

「仕事は終わったんだろう?」

「先に聞け。あったならばわしはこれをつけて国に関わる大事をこなさなければならなかったのか。」

慶次はただ笑うだけ。

鏡を見ると色とりどりの玉が通された銀線が花びらのように重なり、2本顔にかかるくらいに垂れていて先に青緑を基調とし静かに七色に光る涙型の宝玉がついている。

「これも。」

次に出された浴衣は瑠璃から藍へと裾に向かって深く染まり、刺繍が細かく施され恐らく良い値段の物だろう。
勿論良い値の物は着慣れているが最愛の者が自分が似合う物を考え選び自らの金を使い、それが自分も気に入る物だった時の幸福感は計り知れない。

これは自費でも一目で買う。


目を輝かせる政宗に気を良くした慶次は小さな体を勝手自由にくるくると回し待ちきれないかのように着付けさせ、その際数発殴られた。

帯には大きな蝶々結びが二つ。
まだ性別不問いな格好でも許されるだろう背丈、不満に思う事が多かったが今は感謝してしまっている。
伊達政宗だと名乗ろうが誰も信じず気にされず町を歩く事ができる。

美しい浴衣に見惚れつつそんな事を考えていたら熱い視線に気づき、そちらに目を合わせればうっとりとした目で見つめられていて、瞬間に熱が顔に集中する。

「はぁ、やっぱり似合「黙れバカが慶次が喜ぶから着てやってるんだからなこれは褒美だからな感謝せい有り難いならもっと尽くせわしの為にきりきり働け…!!」
甘く続くだろう言葉を一気に遮る。熱で死んでしまう気がしたから…



女々しく嬉し恥ずかしくなる自分を悔しく思いながらも最後に出された美しい下駄に止めをさされ、どうにか普段の自分は無くさないよう眉間に皺を寄せてはいるが体は慶次に寄りかかり眉以外はどう見ても心地が良さそうでまったくの無駄になっている。

そんな様で止めるだなんて誰も出来るわけが無く、小十郎も苦笑いで見送る。
その際慶次に何か耳打ちし、『さぁね』とにやける脇っ腹に保護者の拳が入った。

容易く想像できる話の内容に政宗は気付かないふりをしたが、これも真っ赤な顔色のせいで無駄になった。

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