9 ※暴力表現 [PG-15]

 反乱軍の鎮圧には3か月かかった。フリーザ軍の施設が占拠されていたため敵は武器を大量に所持しており、熱線銃を浴びせるように発射してきた。避けるのは造作もなかったが、業を煮やして基地ごと爆破したのは失敗だった。毒ガスが基地内の倉庫に保管されていたのに、傭兵たちには情報が伝えられていなかったのだ。反乱軍の生き残りを探しに地上に降りた戦闘員が2名、ガスにまかれて死んだ。ベジータは上空に留まっていて無事だった。

任務が終わって正規軍の指揮官が格式ばった演説をし、何人かの働きを讃える。
情報伝達が不十分だったことについてはほんの数十秒ほどしか触れられなかった。

 疲れた体で宇宙船の発着基地に辿り着くと、ベジータ宛に緊急の星間メッセージが届いていると伝えられた。

「誰からだ」
「惑星フリーザNo.21からだ。妨害電波でスカウターに転送できなかったので、こちらで預かってた」
カウンターに座っている若い通信使が爪先ほどのチップを渡す。ベジータはチップをスカウターに差し込んだ。
スカウターに表示された文字を追う。険しい表情を浮かべ通信使に訪ねた。
「このメッセージが届いたのは?」
「先月の…、いや違う。2か月前だな」

2か月、ベジータは声に出さず口を動かした。
「惑星ベジータがどうなったか知っているか?」
「は? どこだって?」
「いや、いい」

「よう坊主! ここはガキの来るところじゃねえぜ。お家に帰んな」
後ろに並んでいた顎鬚をまばらに生やした大男が痺れを切らして言った。正規兵のマークのついた戦闘服を身に付けている。階級は二等兵、ベジータよりも下だった。

「口に気をつけろ、貴様」
ベジータは相手に胸の階級章が見えるように向き直り、殺意を剥き出しにして吐き捨てた。
男は階級を見て一瞬しまったという顔をしたが、声変わりも前の子供相手に頭を下げる気はないらしく、逆に小ばかにして嘲った。

「偉そうな口をきくなよチビガキが。銃がなきゃなんもできねえんだろ? てめえなんぞ、装備がなけりゃそこらの浮浪児と同じだろうが」
男は周りを見回して同意を求めた。
ベジータと同じ部隊にいた兵士たちは無表情で男を見つめている。しかし彼の戦闘能力を知らない他の大半は、男の意見に賛成している様子だった。男は周囲の反応に力づけられ、更に言いつのった。

「いいか。ガキが大人に…」
次の瞬間、男の体は宙に浮き、すさまじい勢いで部屋を横切って頭から壁に激突した。
ベジータは男を殴った拳を固めたまま歩み寄ると、鼻と頭から血を流し、白目をむいて痙攣している姿を見下ろした。
「口に気をつけろ、と言ったぜ」
動揺する周囲をひと睨みすると、彼は宇宙船の発着場に向かっていった。

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