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 ベジータは意気揚々と仲間の元に戻ってきた。ぼろぼろの服を着替え、食事をして眠る。父王に謁見するのはその後だ。そうだ、その時こそ…。

「殿下! お戻りでしたか」
焦りの滲んだ声に呼び止められ振り向いた。太った異星人の連絡員が、体をゆすり息せき切ってやってくる。連絡員は略式の礼をして早口に話し出した。
「お疲れのところ申し訳ございません。3日前、惑星フリーザからベジータ様に当てて西銀河の反乱の鎮圧隊に加わるようにと連絡がございました。急な話ではありますが、今すぐ出立していただきたいのです」
「なに?」
「も、申し訳ございません。急ぎなのです」
「他の者に行かせればいいだろう」
不機嫌をあらわにして言い捨てると、ベジータは無視してその場を去ろうとした。
どれだけフリーザが強かろうと、下っ端からの連絡一つでそのような雑用に王族を呼び出せると思っているのか。
これで話は終わったつもりだったが、連絡員は彼の前に回りこみ断固とした口調で告げた。
「いいえ、殿下をご指名なのです。これ以上遅れればフリーザ様のお怒りを買いますぞ」
連絡員はすぐさま言ったことを後悔した。怒りに燃えたベジータの眼に射すくめられ、口をぱくぱくとさせて非礼を詫びようとしたが、声が出てこなかった。

「行って来い。フリーザ様の命令だ」
気配を察したらしい父王が、執務室から出てくるとベジータの後ろに立って命令した。ベジータは不満を隠そうともせず振り返った。
「しかし、俺は…」
「行って来い。命令がきけんのか?」

有無を言わさぬ口調にベジータは押し黙った。自分はまだ、父王にもフリーザにも逆らえる立場にはない。踵をそろえ姿勢を正す。
「いいえ。ただちに出発します」
その硬い表情には、誰が見ても明らかな子供らしい反発が浮かんでいた。

父王は慇懃にうなずき、難を逃れた連絡員はほっと胸をなでおろす。舌打ちしたいほどの腹立ちを抱えてベジータはその場を後にした。

 ベジータを乗せた小型宇宙船は無音の宇宙を突き進む。ベジータは密林から戻った姿のままで、眠りもせず風呂にすら入っていなかった。構わない。どうせ長期の航行では低体温睡眠に入るのだ。目が覚めた時には目的地についている。戦闘服も向こうで支給される。

 目を閉じれば無数の星々の軌跡が瞼の裏に蘇る。彼はこの瞬間が好きだった。死ではないがおそらく死に最も近い、長い眠りに落ちる直前の瞬間。
不快な記憶も何もかもが過去になる。宇宙空間には完全な孤独があった。
ベジータはひとつ深呼吸をすると座席に深く身を沈め、夢も見ない眠りの訪れを待った。

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